スリランカの都市開発庁(Urban Development Authority:UDA)は、本部と複数の地方事務所(州事務所 9拠点、郡事務所 12拠点、準事務所 2拠点)から構成され、国内 268か所の指定都市地域の開発計画を策定する責務がある。開発計画の策定は、各指定都市地域を管轄する UDA の地方事務所が行っているが、特に計画規模の大きい 24市については、UDA本部が技術的な支援やデータ提供、ステークホルダーとの合意形成支援等を行うことが定められている。UDA は、「UDA Strategic Plan 2018-2022」のもとに 4つの戦略ゴールを定め、「都市計画に基づく都市部の開発の推進」と「都市計画策定手法の近代化」の方針を打ち出している。
しかし、現在のUDAの計画策定にかかる各種技能は低い水準に留まっており、UDAが策定する開発計画の多くは、社会経済指標にかかる将来推計がデータ不足等の理由で十分でなく、ステークホルダーとの合意形成が形式的となる傾向にあり、品質面で多くの課題を有する。現在までの指定都市地域の開発計画の策定数は、「UDA Strategic Plan 2018-2022」に掲げる計画目標を下回っている。
かかる状況を踏まえ、UDAはより高品質で効率的な都市計画の策定を推進するための能力強化支援を我が国に要請した。その要請を受け、本プロジェクトは、UDA職員の技能レベルの向上、UDA内の本部から地方事務所に対する支援体制強化、都市計画策定プロセスの改善を目指すものである。
UDAは内部に「アーバン・リサーチセンター」(Urban Research Center:URC)を新たに設置している。このURCは、都市計画の技術において中心的な役割を担う組織になること、スリランカの都市計画策定をリードすることが期待されている。したがって、本業務では、このURCの能力強化支援を通じ、UDA全体への成果波及を目指すものである。
コロンボ郊外の風景
コロンボ市役所
業務期間は、2022年2月~2025年1月の約3年間であり、URCの効果的な運営を通じ、UDAによる高品質な都市計画が策定されることを上位目標とする。プロジェクトでは、URCの能力強化を通じて、UDAの都市計画策定における ICT 技術の活用、ステークホルダーとの合意形成及びデータの利活用が促進されるようになることを目指す。
期待される成果として以下の4点を目指した活動を行う。
【成果1】URC職員がICT 技術を用いた都市計画手法を習得する。
【成果2】ToT(Training of Trainers:指導員訓練)を通じて、URC 職員がUDAの内部研修を実施するための能力が強化される。
【成果3】ステークホルダーとの効果的な合意形成が促進されるようUDAの既存の都市計画策定プロセスが改善される。
【成果4】URC のデータ共有機能が改善し、URCがUDAにおけるICT技術の活用を牽引するための能力が強化される。
なお、UDAが策定する都市計画は、都市のマスタープランと土地利用計画・建築規制にあたる「開発計画(Development Plan)」、および、特定の地区の具体的なアーバンデザインを定める「ガイドプラン」に代表される。
UDAが策定した開発計画(出典:UDA)
プロジェクトや開発コンサルタントの業務内容の理解を深めてもらうため、以下のタスクを想定する。実際にはプロジェクトの進捗も考慮して研修内容を決定する。
1) UDAが作成した既存の開発計画の分析、課題の抽出
2) UDAが定めている計画策定プロセスの分析、必要な能力強化のアイデアの提案
3) UDAの内部組織構成の整理・役割の把握
4) 他国での先端技術を用いた都市計画の実践例およびURCと類似した役割を担う組織のリサーチ
5) UDA内部に設置されたURCが担うべき役割にかかる議論への参加
6)リモートでのプロジェクト運営管理補助
コロンボ郊外の風景
7月~9月の1~3週間程度 ※応相談
都市計画・建築などを専攻する修士課程1年